国内13大学、海外2大学から16名の受賞学生が参加


11月15日、第44期国際瀧冨士美術賞の授賞式が東京都港区の明治記念館で開かれました。
今年は国内の受賞学生と指導教員、そしてコロナ禍前の2019年以来4年ぶりに海外の大学からも学生と教員を一部お招きしました。
授賞式では主催者を代表して当協会の滝久雄理事長が「いま世界はウクライナ戦争、そしてパレスチナの紛争と、理不尽な暴力が横行し、分断と対立、憎しみと差別を広げています。だからこそ我々はいま文化・芸術の重要性を再確認する必要があるのではないでしょうか。文化・芸術は世界共通のコミュニケーション・ツールであり、国境を越えて人びとの心に訴え、共感を呼び起こし、相互理解を進めます。アートは平和の砦であり、優れた安全保障でもあるのです。若い皆さんがアートをツールに新しい未来を切り開いていく跳躍台に、この賞が些かなりともなるなら、国際瀧冨士美術賞の創設者としてこんな嬉しいことはありません」とあいさつしました。


中:日展理事長 宮田亮平先生
右:東京藝術大学学長 日比野克彦先生
来賓を代表して本賞の審査員で日展理事長の宮田亮平先生が「これからの世界においては皆さんの力が大事です。表現者というものはやればやるほど次の世界観が生まれます。その原点に、瀧冨士美術賞の支援があったことを覚えていていただけたらと思います」と受賞者を激励。
続いて優秀賞・審査員特別賞の受賞者が一人ずつ演壇に呼ばれ、滝理事長から賞状と目録を受け取りました。また、グランプリに選ばれた東京藝術大学の笠原莉花子さんと、海外の大学を対象とした国際グランプリに選ばれたアメリカ・アートセンターカレッジオブデザインのジェニー(ジニン)チェンさんには改めて賞状と目録が授与されました。
式の最後に、審査員で東京藝術大学学長の日比野克彦先生が「個々の価値観や生きる力を育てていくのは文化であり芸術だと思います。政治や経済で国が動いているようには見えますけれど、やはり文化・芸術が根底にあり、人間の心を育んでいるのだと思います。これからも一緒に文化の力で、平和な世界を築けるように頑張っていきましょう」と祝辞を述べられました。


右:国際グランプリ受賞の米・アートセンターカレッジオブデザインのジェニー(ジニン)チェンさん
授賞式後の記念撮影に引き続き、着席形式で懇親会が開催されました。審査員で当美術賞の第8期受賞者でもある、多摩美術大学環境デザイン学科教授の湯澤幸子先生が、総評として今の美術賞の領域の広域性・多様性に触れた後「受賞者の皆さんが今やっている技法や作品もこれから無限に広がっていくのではと思います。皆さんのこれからの活躍を非常に期待しています。そして、今日は美術の力をたたえる日だと思います。美術の力についてポジティブなメッセージを皆さんで広げていけたらと思います」と述べ、乾杯の杯を上げました。
歓談中には前日のパブリックアート工房見学や交通総合文化展2023の招待作家、第27期受賞者の本郷芳哉さんの作品展示の様子をスクリーンで紹介し、受賞学生一人ひとりが受賞作品の映像を前に制作のコンセプトや将来への抱負を語り、温かい拍手を浴びました。また今年は、現在日本に滞在し、協会のサポートを受けながら工房で陶作品の制作に励むアーティストのアリサ ニコラエヴァさん(仏・パリ国立高等美術学校卒業)によるご挨拶も行われ、「工房で様々な支援を得ながら日本の土を使って、陶の制作に励むことができることはアーティストとして非常に喜びを感じています。今日ここで受賞された若い学生の皆さんが、工房でまた新たなパブリックアート制作のことを身に着けるために、滞在され、研修を受けられることを望んでいます」と述べました。
最後に日本藝術院会員・洋画家の大津英敏先生が「これからも皆様の努力と芸術を通して、世界平和のためにどうぞお力添えいただけたらと思います」とのあいさつで会を締めくくりました。






右:指導教員のアートセンターカレッジオブデザイン・ペニー ヘルスコヴィッチ准教授
なお、授賞式の前日には受賞者と指導教員が「クレアーレ熱海ゆがわら工房」(静岡県熱海市)を見学し、工房のスタッフから陶板とステンドグラスのパブリックアートがどのように作られるか説明を受け、同工房で陶作品の制作に励む工房研修生のアリサ ニコラエヴァさんと交流も行われました。このあと陶板とステンドグラスを使ったワークショップで作品を造り、これらは懇親会会場に飾られました。




右:陶板とガラスのピースでアートワークを造るワークショップ



