TOP パブリックアート事業
パブリックアートは「公共空間のための芸術・文化作品」を言います。経済恐慌後の1930年代、スウェーデンやアメリカで苦しい状況にある芸術家やアーティストのために仕事を発注する公共政策として始まりました。戦後の50年代になると、フランスで公共建築を建設する際に、総予算の一部(1%)を美術作品の設置・購入に振り当てることを義務付ける法律が成立します。60年代にはアメリカでも「アートのための%」という名称で、国・地方自治体レベルで法制化が進み、文化政策の有力な制度として定着しました。何パーセントを芸術・文化作品に割くかは国によって異なりますが、いまでは欧米諸国にとどまらず、中国、台湾、韓国でも同様の取り組みが行われています。
当協会は駅や空港をはじめ、学校、病院、行政施設、企業、劇場などのパブリックスペースに、ステンドグラスや陶板レリーフ、彫刻などを設置する運動を進めています。見る人に喜びと潤いを与えるとともに、人々の生活の中に当たり前のようにアートが存在する社会を作りたいとの思いからです。芸術的景観という点でもパブリックアートが果たす役割は小さくありません。ある世界の知性は「今、我々に欠けているのは芸術でない。大衆である。芸術に意識をもつ大衆ではない。無意識的に芸術的な大衆である」と語りました。私たちの活動がそのような大衆を増やしていく一助となることを願っています。
当協会では、パブリックアートをはじめとした環境芸術推進活動を、「クレアーレ」と呼んでいます。「クレアーレ」はラテン語で”Creare(創造)”を意味します。
陶板レリーフとステンドグラスは「パブリックアートには最適な素材」との確信を抱いて発展させてきました。作品はいずれも作家の原画をもとに製作されますが、出来上がった作品は原画のコピーや複製ではなく、新しく翻訳し直し、新しい解釈と価値を加えた、いうならば原画とはまったく異なる別種のアートなのです。私たちはこれを「クレアーレアート®」と呼びたいと思います。
これまでパブリックアートのためにさまざまな芸術家の方に原画を引き受けていただきました。第一号となった東京駅の『天地創造』の福沢一郎先生(洋画家)をはじめ、平山郁夫先生(日本画家)、堀文子先生(日本画家)、野見山暁治先生(洋画家)、絹谷幸二先生(洋画家)の大家の方たち、現代美術家の日比野克彦先生、日本が世界に誇る漫画・アニメの分野では手塚治虫先生、大友克洋先生、水木しげる先生、高橋陽一先生がおられます。外国人では造形美術作家のルードヴィッヒ・シャフラット先生(ドイツ)やルイ・フランセン先生(ベルギー)、画家のルイス・ニシザワ先生(メキシコ)。さまざまな人の目に触れるパブリックスペースで、二次元的、空間的制約を取り払って思いのままに自分の作品を造形してみたというのは芸術家にとって武者震いするような挑戦です。しかも作品は半永久的に残ります。
最初の作品は、1972年に東京駅の地下中央通路大階段正面に福沢一郎先生(洋画家)の原画によるステンドグラス作品「天地創造」でした。こうして北海道から石垣島まで全国にパブリックアート作品を設置していき、2014年2月には福島空港に500番目となる堀文子先生(日本画家)の原画による陶板レリーフ作品「ユートピア」が設置されました。2015年3月には漫画家の大友克洋先生の原画・監修による「金華童子風神雷神ヲ従エテ波濤ヲ越ユルノ図」を仙台空港に設置、その後も全国の駅や空港、公共施設への設置活動を続け、2022年8月現在、手がけたパブリックアートは551作品を数えます。
2000年、日本画家の平山郁夫先生をはじめ日本の著名な知識人、芸術家が中心となって「パブリックアートの振興に関する提言」をとりまとめ、森田運輸相に提出しました。この事務局を当協会が担当しました。この提言でパブリックアートの振興・普及と「1%フォー・アート」の法制化のため国が主導力を発揮してほしいと要望しました。このほかさまざまな機会を利用してパブリックアートの社会浸透を図っています。
当協会は釉薬の研究も進め、パブリックアートの制作支援を行っています。現在では各種釉薬の調合や温度管理等によって約6500色を管理しています。これによって陶板レリーフ作品の制作においてはどのような色合いにも対応できる体制を整えています。
当協会が企画してきたパブリックアート。数々の作品やその制作現場を動画にてご紹介しています。
協会のYouTubeチャンネルよりぜひご覧ください。
JPTCA日本交通文化協会 YouTubeチャンネル