- 国土交通大臣賞
「藤駈ける」 川﨑 成人
(京都府伏見区 藤森神社 駈馬神事)京都市藤森神社で行われる「駈馬(かけうま)神事」は親から子、子から孫へと受け継がれてきた伝統行事であり、全力で駈ける馬の背から落ちるように見せかける「藤下がり」などの様々な技を披露します。この神事にかける乗り手の一瞬の表情、姿勢、そして多くの観客が見つめる様子を収めた一枚です。(2022年5月撮影)
講評:神事での曲芸的馬術。敵の矢に当たったと見せて駈け抜ける技を絶妙なポジションから捉えています。つま先までピンと張った乗子(のりこ)の所作が美しく、視線の先にこの後受け取る扇子があることでこの後の展開も想像できます。望遠レンズの圧縮効果を活かし、背景に観客を写し込んだことも功を奏し、神事の賑わい、緊張感が伝わってきました。(清水 哲朗/写真家)
- 環境大臣賞
「躍動」 谷口 常雄
(鹿児島県大島郡 奄美大島)初夏の海、水深15mのどこまでも続く白い砂地を進むと大きなサンゴのかたまり(根)が現れます。根を覆い隠すほどの小魚たちの命の息吹と、赤いハタの動きと共にさまざまに形を変える様子はまるで万華鏡を覗いているかのようで感動しました。(2022年6月撮影)
講評:2021年に世界自然遺産に登録された奄美大島。生物多様性は海中にもあるようです。透明度の高い青い海、小魚の群れ、主のように居座る真っ赤なハタと見事な光景が広がっています。水中ハウジングに入れたカメラを手に作者は静かな呼吸で近づき、フィッシュアイとストロボで華やかなイメージを見事に切り取っています。(清水 哲朗/写真家)
- 九州旅客鉄道株式会社社長賞
「飛躍」 長崎 みなと
(長崎県西海市 針尾瀬戸)日本三大急潮の一つ、針尾瀬戸の渦潮を越え朝日に向かって進む、輸送中のN700S。通過する時には太陽が昇り、迫力ある瞬間を収められました。鉄道開業150周年の今年に、新たな鉄道の歴史に名を刻む西九州新幹線。今後の西九州に大きな希望とさらなる発展をもたらすことを心待ちにしています。(2022年3月撮影)
講評:ふだん目にすることのない海上輸送、しかも2022年9月23日に開業する西九州新幹線の車輌N700S「かもめ」を点景として捉えた作品は審査員一同から驚きの声が上がりました。撮影ツアーなども企画されているようですが、情景まで伝わってくる描写に様々な人の思いを感じ、胸が熱くなりました。印象的な空とタイトルにこれから始まるドラマへの期待が膨らみます。(清水 哲朗/写真家)
- 公益社団法人日本観光振興協会会長賞
「絶滅危惧種が飛来する干潟」 大久保 辰朗
(山口県下関市 千鳥浜)毎年下関の実家に帰省した際、早朝に撮影に行く千鳥浜は干満の差が大きく、干潟が現れると沢山の野鳥がやってきます。東京に戻り撮影したデータを見返すと絶滅危惧種のクロツラヘラサギが写っていました。これだけの群れが飛来するのは非常に珍しいためぜひ多くの方々に見ていただきたいと思います。(2021年11月撮影)
講評:ペリカン目トキ科に属するクロツラヘラサギは主に東アジアに生息する絶滅危惧種。日本では九州や沖縄が越冬地になっており、山口県でも飛来確認がされています。作者は空が焼ける時間帯に羽を休めるクロツラヘラサギの一団を点景として捉え、生息環境含めて描くことで余韻あふれる作品に仕上げています。(清水 哲朗/写真家)
- 一席
「ドレミファ」 石井 良明
(神奈川県横浜市 YOKOHAMA AIR CABIN)横浜・みなとみらい地区で運行する都市型循環式ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN(ヨコハマエアキャビン)」は、JR桜木町駅前から新港地区の運河パーク間を約5分で行き来しています。汽車道の鉄橋を渡る歩行者にタイミング良く来たSUP(スタンドアップパドルボード)に乗って楽しむ人達を一緒に撮影しました。(2022年5月撮影)
- 一席
「里山の春」 吉田 昌弘
(福島県南会津町 森戸)昔話の花咲か爺さんが住んでいそうな里山の景色が福島の秘境にありました。不思議な形の山と桜の間には小川が流れ、早朝に川霧が漂う様子は良い演出となりました。(2022年5月撮影)
- 二席
「眠らない東海道」佐藤 善樹
(静岡県静岡市 由比西倉澤)夕刻の富士山が見えている時間から撮影を始め、暗くなると雲間に星が煌めきました。海岸沿いを走る列車と高速道路の車の軌跡は光の筋となり、その反射に染まる雲の色を海が映し黄金色の海のようでした。この情景に日本経済の活力、止むことのないパワーを感じ、まるで眠らない東海道なのだと思いました。(2022年2月撮影)
- 二席
「森の中の駅」 長谷川 強
(北海道大空町 JR石北本線 西女満別駅)友人二人との撮り鉄旅三日目。宿を早めに出発し駅のホームが見渡せる跨線橋で待機していると、朝練なのか体操着姿の学生らしい二人が列車を待っていました。網走発北見行き一両編成の普通列車が到着。その西女満別駅7:56発の列車に乗り込む瞬間を、勢いのある周囲の植物と一緒に切り取りました。(2022年6月撮影)
- 二席
「沖縄の夏」(4枚組) DU JING
(沖縄県南城市 知念岬公園)留学中に日本を旅するのを楽しみにしていましたが、コロナ禍では叶いませんでした。卒業半年前に意を決して沖縄旅行へ。旅先で出会ったブラジル人の友達と訪れた知念岬公園で青い海を眺めて心がほっとした瞬間。夏の沖縄の魅力はその瞬間にありました。写真を見ると今でも当時の気分を思い出します。(2021年9月撮影)
- 三席
「わたしも休日倶楽部」 高木 美香
(神奈川県小田原市 小田急 特急ロマンスカー)名古屋に住むおばあちゃんが初めて年末年始を我が家で過ごしました。名古屋へ帰る日、見送りのためロマンスカーで小田原まで。売店でお弁当を買っていざ乗車! 好物の鮭おにぎりと肉だんごをほおばる娘がかわいらしく、思わずシャッターを切りました。大切な思い出がつくれて幸せだなと感じました。(2021年1月撮影)
- 三席
「夕暮れの棚田に花火ゆらり」 高群 純一
(佐賀県玄海町 浜野浦の棚田)「日本の棚田百選」に選ばれた浜野浦の棚田。毎年夕陽の撮影へ行きますが、5月1日にサプライズで花火が上がるという話を聞き、現地へ12時に到着し待つこと7時間。5分間で75発の打ち上げはあっという間でしたが、夕焼けの中に上がる花火が棚田に映り込む光景は何とも言えない感動の瞬間でした。(2022年5月撮影)
- 三席
「厳冬の別寒辺牛湿原(べかんべうししつげん)を駆ける」 五十嵐 正樹
(北海道厚岸町 JR花咲線 茶内駅~厚岸駅)花咲線では根室行き最終列車が翌日始発で釧路に戻ってきます。不定期運行のキハ40形の最終列車運用を確認、翌日の始発列車をこの場所で待ち構えました。この日はマイナス14度と厚岸地方2月の最低気温を記録、息を飲むような霧氷が広がる中、列車が雪煙を上げながら駆け抜ける姿をものにできました。(2022年2月撮影)
- 三席
「伝統の舞」 藤島 純七
(宮城県南三陸町 入谷八幡神社 入谷打囃子)入谷八幡神社例祭で行われる、約260年の歴史を持つ「入谷打囃子」。祇園囃子の流れをくむお囃子と獅子舞が見どころで、県の無形民俗文化財に指定されています。この日のために練習を重ねた獅子と子供のお囃子の息もピッタリです。約20年前に写真を始め、今もこの祭りに魅せられて毎年撮影を続けています。(2019年9月撮影)
- U-22賞
「薄明」 新田 龍一
(山梨県北杜市 JR小海線 小淵沢駅~甲斐小泉駅)JR小海線の「小淵沢の大カーブ」と呼ばれる有名撮影地で、定番構図とは違う1枚を撮りに足を運びました。始発を撮るために準備をしていると、群青一色だった空が日の出とともに明るくなり綺麗なグラデーションが現れました。そこで主題を空に切り替え、影絵のようなその光景を写真に収めました。(2021年11月撮影)
- 入選
「筏流し」 髙橋 正巳
(愛媛県内子町 川登川まつり 筏流し)小田川では山から切り出した木材を筏(いかだ)にして河口の長浜まで運ぶ光景が、江戸後期から昭和初期までよく見られていました。「筏流し」は長さ4mの丸太を10本並べた「コマタ」という筏を作り、筏師が竿を操って急流を下る光景を復活させたイベントです。(2020年4月撮影)
- 入選
「ようこそ奥出雲へ」 遠藤 勉
(島根県奥出雲町 JR木次線 出雲八代駅~出雲三成駅)近年、ローカル線廃止の話が多く聞こえますが、観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」も2023年度で運行終了が発表されています。奥出雲町の皆さんは観光列車の存続を願い、列車が来る時間に沿線に集まり乗客をお出迎えされていました。こういったおもてなしが次の観光列車の運行に繋がることを願います。(2021年11月撮影)
- 入選
「秋色・金色(しゅうしょく・こんじき)」 遠藤 聡
(兵庫県小野市 北条鉄道 粟生駅~網引駅)山あいのカーブを列車が通る場所にススキが群生しており、夕日に輝く様子を撮影していました。その時、線路際の田んぼで農家の方が野焼きを始め、その煙が夕陽に照らされ一面が金色の世界に。何度も通っている場所ですが、このような機会に出会ったのは後にも先にもこの時だけで大変幸運でした。(2021年10月撮影)
- 入選
「スタジアムツアー」 高島 賢
(東京都新宿区 国立競技場)無観客開催となった東京五輪。メイン競技場の国立競技場も期間中は規制で近づけなかったけど、今年から見学ツアーが始まりました。47都道府県の木々など木材が多用されている施設は酷暑でも風が通る設計で、アスリートの戦いを追体験しつつ日本の技術にも圧倒された素晴らしいスタジアムツアーでした。(2022年6月撮影)
- 入選
「煌めきのLand」 山森 恵子
(大阪府豊中市 伊丹空港)千里川の土手は伊丹空港に離発着する飛行機を身近に撮影できるポイントです。ジャンボジェット機を撮影する人が多いですが、私はボンバルディアのプロペラ機が好きで、夜間に着陸する時プロペラが光り輝いてとても美しく、見惚れて夢中でシャッターを切りました。(2021年9月撮影)
- 入選
「ふれあい」 伊藤 良一
(静岡県川根本町 大井川鐵道 青部駅~埼平駅)友人に連れられ大井川上流にSLや茶畑の撮影に行きました。特にSL撮影は初めてで、もくもくの黒い煙や力強い姿に圧倒されましたが、茶摘みのおばさんの手を振る姿とそれに応える運転手の姿を捉えることができ、とても幸運でした。(2021年4月撮影)
- 入選
「アンパンマン列車が来た」 大西 弘行
(香川県まんのう町 JR土讃線 塩入駅~黒川駅)菜の花畑をアンパンマン列車が通るところを撮りたくて待ち構えていました。ちょうどその時、家族連れの方が来られたのでお願いして、「どこでもドア」から出たところをアンパンマン列車と併せて撮影しました。(2022年4月撮影)
- 入選
「早苗饗(さなぶり)の頃」 清水 保裕
(山形県遊佐町 JR羽越線 吹浦駅~遊佐駅)以前から田植えの時期に鳥海山の映り込みを撮りたいと思い、田植えの状況を調べ天候の様子を見ながら撮影地へ向かいました。狙い通りの状況に興奮しながら撮影し一段落していると、なんと赤い列車の特急いなほが来ました。カメラでの撮影が間に合わないと思い、素早くスマートフォンで撮影した1枚です。(2022年5月撮影)
- 入選
「滝の上を走る黄昏電車」 堀内 勇
(和歌山県かつらぎ町 JR和歌山線 西笠田駅~名手駅)四十八瀬川(しじゅうはっせがわ)橋梁はダムのようになっている川と重ねることで滝の上を走るような構図になる写真映えポイントですが、季節感を出しにくいです。積雪のない地域なので降雪時を狙うわけにもいかず、それならばと6月中旬から7月中旬の黄昏時を狙い、夏至前後の夕焼けを背景に反映させて季節感を出しました。(2022年6月撮影)
- 入選
「紅葉並木に虹のトンネル」 平 尚治
(滋賀県高島市 マキノピックランド)虹の名所と言われる滋賀県湖西地方へ、メタセコイア並木が紅葉する最も美しいタイミングを狙って訪れました。小雨の降る中太陽が射すのを待ち続けること数時間、奇跡的に並木道を中心に虹のトンネルが出現。ほんの2分程度でしたが、二度と撮れないかもしれない貴重な景色を撮影でき感激しました。(2021年12月撮影)
- 入選
「天塩川の流れに沿って」 佐々木 康成
(北海道美深町 JR宗谷本線 初野駅~恩根内駅)旭川発稚内行き特急サロベツは普段は通常色のキハ261で運行していますが、季節により深い緑に映えるピンクの車体の「はまなす」編成キハ261、5000番台が運行されます。沿線は木々が多くてなかなか車体全体が見えるポイントは少ないですが、雄大な天塩川と共に撮影するためにドローンを活用し撮影しました。(2021年8月撮影)
- 入選
「焔を渡りけり猿田彦神」 山下 一成
(北海道古平町 恵比須神社例祭 天狗の火渡り)天狗の火渡りは毎年7月に古平(ふるびら)町の琴平神社、9月に恵比須神社の例祭にて行われます。天狗の面をかぶった猿田彦神が町中を歩き、最後に炎の中を歩いて身を清める祭事が行われます。猿田彦神が一本下駄を履いて足を上げる瞬間を捉えるのは、難しい撮影でした。(2019年9月撮影)
- 入選
「お昼寝」 犬飼 明日香
(長野県山ノ内町 地獄谷野猿公苑)地獄谷野猿公苑は野生の猿が温泉に入ることで有名です。気温が低く雪が降る日に訪れたところ、予想通りたくさんの猿たちが温泉で温まっていました。よほど気持ちが良いのか目の前の子猿が口を開けたままうとうとし始めました。その様子はとても愛らしく、そして寒い日だったので羨ましくも思いました。(2022年2月撮影)
- 入選
「雪国の厄払い」 (3枚組)小野寺 三彦
(岩手県西和賀町 下前厄払い人形送り)厄払い人形送りはその年の始めに地区内に疫病が入り込まないよう、ワラで人形を作り地区の境まで送って無病息災を祈願する伝統行事です。西和賀は東北有数の豪雪地帯でこの日も吹雪と2m超の積雪に見舞われましたが、正にコロナ禍の真っ只中にあるお互いの健康を祈りました。(2022年3月撮影)
- 入選
「吹雪きの中で」(3枚組) 村上 吉秋
(岩手県北上市 JR北上線 岩沢駅)北上市の西部は雪の多い地域です。秋田県の横手へ向かう下り列車が猛吹雪の中、奥羽の山間にある岩沢駅で立ち往生。強風の中での線路の除雪作業の厳しさと、運行再開を待つ列車内の乗客の表情が印象的な出来事でした。(2021年1月撮影)
- 入選
「峠に挑む」 山岡 信彦
(長野県川上村 JR小海線 信濃川上駅~野辺山駅)小海線の信濃川上駅から野辺山駅までの間はきつい上り勾配が続き、その先の1,375mのJR鉄道最高地点へと至ります。陸橋の上に立ちカメラを構える私の前を、2両のディーゼルカーが八ヶ岳の主峰・赤岳からの夕陽を浴びて大きなエンジン音を響かせながら、峠に挑んでいきました。ガンバレ、小海線!!(2020年4月撮影)
- 入選
「建て御柱 ヨイサ、ヨイサ」 草信 純雅
(長野県諏訪市 諏訪大社上社御柱祭 里曳き・建御柱)長野県指定無形民俗文化財で7年に一度行われる諏訪大社御柱祭。「里曳き」最終日に行われる「建御柱(たておんばしら)」は「冠落し」を終えた御柱に氏子がまたがり、ヨイサの掛け声とラッパの音とともに垂直になるまでゆっくり引き上げます。スポットライトのような強い光が差し込んできた印象的な瞬間を撮影できました。(2022年5月撮影)