- 国土交通大臣賞
「お待たせしました!」 長谷川 裕二
(佐賀県唐津市 唐津くんち・宵曳山)唐津くんちは唐津神社秋季例大祭で、毎年11月2~4日に開催されます。初日に行われる提灯の灯りが幻想的な「宵曳山(よいやま)」は、曳子も見物客も一年間待った、ワクワクする気持ちが最高潮となる瞬間です。来年は「二年間待ち」の祭りに大興奮している人々の姿が見られることを強く望みます。
講評:国の重要無形民俗文化財であり、ユネスコ無形文化遺産である唐津くんち。作者が撮影したのは提灯灯る宵曳山。曳子をはじめ、住民、観光客の表情からは喜びや高揚感が伝わってきます。本年は新型コロナウイルス感染防止のため中止となってしまいましたが「エンヤ、エンヤ」の掛け声が聞こえてくるような作品に勇気と希望をもらいました。(清水 哲朗/写真家)
- 環境大臣賞
「華麗なるジャンプ」 佐々木 弘紀
(佐賀県小城市 海遊ふれあいパーク)日本一の干潟・有明海。そのシンボルであるムツゴロウは5月後半から求愛シーズンに入り、オスがメスに対して自分を誇示して盛んにジャンプを繰り返します。満潮から引き潮になりムツゴロウが泥の上を飛び跳ねるタイミングで、斜め上から光が射して影ができる場面を狙いました。
講評:干潮と満潮の潮位差が日本一大きい有明海。6時間程度の干潟に現れた繁殖期のムツゴロウが水面から飛び出る求愛ジャンプをタイミング良く、高速シャッターで激写しています。威勢の良いジャンプが見られるのはこの時期限定。ムツゴロウの飄々とした表情、背びれ・尾びれ・胸びれの綺麗な開き具合、躍動感溢れる水の描写が見事です。(清水 哲朗/写真家)
- 東海旅客鉄道株式会社社長賞
「往来する街」 伊藤 優
(東京都大田区 JR東海道新幹線 品川駅~新横浜駅)京都・奈良が好きな東京人にとって、東海道新幹線は便利で馴染みある鉄道。今年は旅行を控える中、なぜだか撮影したくなりました。建物が密集する街中で新幹線が交差する風景は旅行を楽しんでいた自分を懐かしみ、多くの人が様々な事情で東西を往来する姿を投影していると感じました。
講評:丹沢の山々を背に夕日を浴びるツインタワーが印象的です。肉眼ではこうは見えないため、遠くにあるものが近くにあるように写る望遠レンズの特長、圧縮効果を利用しているのがわかります。そこに上りと下りの新幹線が並ぶ瞬間を捉えることで作品価値を高め、完成度を追求したのが本作の魅せどころ。見るほどにため息が出る素晴らしい作品です。(清水 哲朗/写真家)
- 公益社団法人日本観光振興協会会長賞
「なかよし」 伊藤 直美
(鳥取県鳥取市 長瀬の大しだれ桜)樹齢400年以上の長瀬の大しだれ桜は、県の天然記念物です。その満開の花の下で、幼稚園を卒園した子どもたちと出会いました。長い歳月を経た巨樹と幼い子らの姿が対照的でかわいらしく、撮影させていただきました。笑顔満開の子どもたちと満開の桜に巡り合えた感動が今も残っています。
講評:鳥取県指定天然記念物の枝垂れ桜の前で手をつなぎ、飛び跳ねる子どもたちの満面の笑みが最高ですね。本人たちも家族も作者もこの作品を見る人も皆がハッピーな気持ちになります。他人だけでなく友人や家族とも距離を取らなければならなくなった時代において大切なものは何かを教えてくれる作品です。長寿の桜も静かに人々の行動を見守ってきたと思うと感慨深いです。(清水 哲朗/写真家)
- 一席
「春光」 井口 晃志
(三重県津市 三多気の桜)三多気の山桜並木は国指定名勝、「さくら名所百選」に選ばれています。雨上がりで空が霞み、その霞で優しい光となりました。立派な桜ときれいに整備された水田を一緒に写せる場所はほかになく、日本の文化によって生まれたこの景色をもっと多くの人に知っていただきたいと思います。
- 一席
「秘境駅の賑わい」 伊藤 雅章
(岩手県住田町 JR釜石線
上有住駅)上有住(かみありす)駅はかつては石灰石を運ぶための駅でした。今は無人駅ですが、SL銀河号が停まる日は特別です。5分間の停車時間、乗客はホームへ降り、乗務員が笑顔で撮影に応じる姿が素敵でした。車掌の笛で乗客が車内へ戻り、汽笛が山々に響き遠ざかり、またいつものだれもいない駅に戻ります。
- 二席
「ワオー!」河村 和彦
(大阪府豊中市 伊丹空港)伊丹空港近辺に住んでいるので飛行機の写真は撮っていましたが、ある時、近くの駐車場でいきなり小高い樹木から着陸態勢の飛行機が姿を現し、経験したことのない迫力に圧倒されました。この迫力を表現したく試行錯誤の末にいきついたのが、滑走路真下を通る空港地下道の交差点でした。
- 二席
「春響」 佐藤 成公
(秋田県由利本荘市 百宅集落)由利本荘市鳥海町の百宅(ももやけ)集落は、2028年にはダム湖に沈んでしまいます。私なりの記録を残そうと撮影に行ったとき、渡り鳥のアトリの大群に遭遇しました。渡りが近づいているため、訓練しているかのように春の桃源郷に凄まじい羽根音を響かせ乱舞している光景に野生の脅威を感じました。
- 二席
「夕暮れ電車」 廣瀬 靖之
(大阪府東大阪市 近鉄けいはんな線 新石切駅)新石切駅を中心に夕暮れ時を撮影しようと、生駒山麓の小高いところへ。紅葉した桜を入れて駅を捉えられるポジションは民家の堀の際。空が紅く染まり街の灯りが灯るころ、住人の方に「すごくきれいな景色でしょう」とお声がけいただきました。秋風が心地よい、都会の秋の夕暮れでした。
- 三席
「一斉射撃」 河口 毅
(岡山県倉敷市 日本第一熊野神社 秋季大祭)熊野神社の秋祭り「秋季大祭」で行われる備州岡山城鉄砲隊の演武は、本祭り前夜の祭礼「宵まつり」中で神事が行われた後に演じられます。日没の頃、少し暗くなった三重塔の前で鉄砲から発射される火花はきれいに浮き上がり、大迫力の写真が撮影できます。
- 三席
「市電もマスク」 岩間 廣
(北海道札幌市 札幌市電 西4丁目停留場)人は新型コロナウイルスと闘っています。のんびり走る路面電車も車内対策のみならず、車体前面に特大のマスクを装着して市民にマスクの着用を呼び掛けています。街を歩く人、走る電車もみんな“マスク”です。みんなの力を結集して、この難局を乗り越えたいものです。
- 三席
「湿原を走る」 宮田 芳明
(北海道厚岸町 JR根室本線 糸魚沢駅~厚岸駅)別寒辺牛(べかんべうし)湿原は「厚岸湖・別寒辺牛湿原」としてラムサール条約に登録されている湿原です。その中を走る根室本線の列車は一日6往復とシャッターチャンスが少なく、また、撮影している場所はクマが出そうなところですが、この光景を見てすべてを忘れて撮影した一枚です。
- 三席
「浅間夕景」 坂神 宗之助
(長野県小諸市 浅間山)この写真を撮影したのは浅間山の外輪山で、標高2404mの黒斑(くろふ)山です。浅間山の雄大な山容が噴煙を上げ、眼前に迫る景観に圧倒されます。厳冬の夕陽に映える浅間山はオレンジ色に輝き、おりからの満月が画面を飾る光景に感動のシャッターを押しました。
- U-22賞
「大地層を走る」 櫻井 俊彰
(東京都大島町 地層切断面)伊豆大島の地層切断面は火山灰などの堆積物が降り積もってできたもので、バームクーヘンとも呼ばれています。夕方にオレンジ色に輝く断面と千葉から島へ来て第二の人生を歩むバスを運よく収めることができました。都内なのに“地球”を感じられるこの地は通いたくなるほど壮大でした。
- 入選
「朝霧を行く」 荻野 悦男
(神奈川県松田町 小田急小田原線 新松田駅~開成駅)私は国鉄時代、運転士として勤務していました。今でも電車が大好きで、農作業の合間に電車の撮影をしています。酒匂川橋梁を小田急のロマンスカーが「朝霧の中、水面に映る絶好のチャンス」を今か今かと待っていましたが、2019年冬に絶好のチャンス到来、夢中でシャッターを切りました。
- 入選
「鯉のぼり流し」 長谷 利宏
(鳥取県鳥取市 もちがせ鯉のぼり流し)毎年5月1日~5日、用瀬(もちがせ)町の中を流れる清流の瀬戸川に約100匹の鯉のぼりが泳ぎます。このイベントは有志の方が町おこしのため住民の協力を得てはじめたもので、地元から提供された鯉のぼりのほかに、水車や武者飾りを乗せた小舟なども設置されます。
- 入選
「弘南闘雪」 寺田 裕一
(青森県平川市 弘南鉄道弘南線 津軽尾上駅~尾上高校前駅)2019年冬、朝一番の列車に乗ろうとした弘南線で、撮影用ではない本物で雪まみれの除雪列車に出会えました。1923年(大正12年)生まれの電気機関車が黒いラッセル車を従えて現れた時は幸運をかみしめながら、寒さを忘れ、美しさと力強さに魅せられ昂る気持ちを鎮めてシャッターを押しました。
- 入選
「明日へ」 並木 達郎
(東京都大田区 羽田空港)2月下旬、羽田空港からは富士山に沈む夕日が眺められます。展望デッキで撮影していましたが、飛行機を見上げるほうがいいと思い探したら、離陸する機体と富士山、日の入りをひとつに収められる場所を見つけました。飛行機は夕日と富士山に見守られながら、次の目的地を目指します。
- 入選
「花春」 杉浦 正幸
(徳島県小松島市 JR牟岐線 阿波赤石駅)満開の桜と列車を撮影しに、早朝の阿波赤石駅に向かいました。駅の南側から湾曲した線路とホーム、列車を撮影しようとしたところ、乗客が駅に来て運転手にあいさつしてから列車に乗り込みました。朝暘に照らされた桜と列車、乗客の日常を一枚にまとめました。
- 入選
「多軸台車2台で橋梁架設」 増田 興次
(愛知県名古屋市 名古屋第二環状自動車道)建設中の名古屋第二環状自動車道。橋梁架設にはクレーン車ではなく、多軸台車を用いていました。多軸台車は橋脚の持ち上げ、運搬など全作業をコンピュータ制御しています。ダイナミックでなおかつ緻密な動きに感銘し、高速道路建設にかかわるみなさまのご苦労を再認識しました。
- 入選
「大動脈を守る」(4枚組) 福田 尚人
(滋賀県野洲市 JR東海道新幹線 米原駅~京都駅)線路や設備を走行しながら検査する「新幹線のお医者さん」、鮮やかな黄色のドクターイエロー。今走っている700系は3代目ですが、次世代のドクターイエローは作らず「将来廃止に」というニュースも耳にしました。今のうちに、故郷の近江路を走る有終の姿を残そうと、足しげく通いました。
- 入選
「旅立ち」 田村 貴史
(兵庫県神戸市 神戸空港)豪華客船の飛鳥Ⅱの出港を写すため、神戸大橋で撮影後に急いで神戸空港展望デッキへ。息を切らしてデッキへ上り、ぎりぎりで飛鳥Ⅱと明石海峡大橋を撮影。また、離発着数が少ない中で飛行機が離陸するタイミング、それも尾灯(白ストロボ)が点灯した瞬間と絡めて撮ることができました。
- 入選
「にんきもの」 大橋 和仁
(岐阜県本巣市 樽見鉄道 水鳥駅)国鉄樽見線の廃線が決定された時、存続を可能にしたのは地域住民の声だったそうです。以来、樽見鉄道は人々の生活を支え続けています。おそらく、この車両は地域で一番の「にんきもの」で、日本の鉄道と鉄道員の方々が地域の人と心から繋がっている様子が切り取れたと思います。
- 入選
「SL冬の湿原号」 髙橋 和幸
(北海道釧路町 JR釧網本線 釧路湿原駅~塘路駅)SL冬の湿原号は冬の釧路湿原を走行する、冬季限定の観光列車です。車窓からは、雪原にいるエゾシカやタンチョウヅルを見ることもできます。撮影場所は釧路湿原を見晴らせる高台で、湿原一帯を蛇行する釧路川が一望できます。その川の横を驀進するSLの勇姿は最高です。
- 入選
「山里の祭り」 白石 信夫
(愛媛県内子町 三島神社 秋季例大祭)山里の内子町で続いている三島神社の秋祭りでは社切り、獅子舞などが奉納されます。小学生たちがサルやキツネなどに扮し、笛と太鼓に合わせて面白おかしく練りを披露。サルの演技が終わると、一番の見どころの2匹のキツネの出番になります。山里の秋祭り、ずっと続いてほしい伝統です。
- 入選
「偉人達」 村田 茂
(栃木県日光市 東武鬼怒川線 大桑駅~新高徳駅)文化財として登録されている、東武鉄道砥川橋梁。その上をSL大樹号が通過します。橋梁の向こうには閉園したテーマパークの、歴代アメリカ大統領が彫られたマウント・ラシュモアのレプリカが見えます。たなびくSLの煙で、大統領たちの顔が見えなくなるところでした。
- 入選
「安全運行のために」 車 啓司
(東京都荒川区 JR貨物 隅田川駅)日本の物流を支える貨物列車。それを牽引する機関車が色違いで、綺麗に整列しています。運転手さんが乗務する前に念入りに安全確認をしている姿に、コロナ禍の世の中でも物流を止めない、安全運行をする責任感と誇りを感じました。
- 入選
「バッチリ決まったー!」 森田 栄一
(埼玉県川越市 小江戸川越春まつり)小江戸川越春まつりのオープニングで行われる、川越鳶組合による伝統芸能「梯子乗り」。その卓越した演技はダイナミックでありながら、サーカスのような面白さもあります。絶妙なバランス感覚は見事で、見る者を飽きさせません。ハラハラドキドキしながら、決めの一瞬を狙いました。
- 入選
「新幹線」 舘石 和佳
(東京都北区 JR東北新幹線 上野駅~大宮駅)連結したE5系とE6系に東京駅で出会い、俯瞰で撮影をと思ってから10年余り。撮影場所は王子駅近くにある北とぴあの展望ロビーとしましたが、余分なものが写らないよう望遠レンズを使うのに三脚は使用できないなど、いろいろと苦労しました。時間がかかった末にできあがった作品です。
- 入選
「修験道」 生田 守
(福岡県添田町 英彦山植樹祭)修験地として知られる英彦山は、台風などの被害で山林が荒廃してしまいました。山林再生のため、英彦山神宮主催で植樹祭が行われました。標高1100m近い植樹場所へは宮司や信者との登山でしたが、修験の山だけあって急勾配の険しい山道に息も絶え絶え、命がけ(?)の撮影となりました。
- 入選
「斗南船北馬」 木戸場 孝行
(青森県東通村 尻屋崎)寒立馬が放牧されている草原の背後には津軽海峡があり、それらを真っ白な尻屋崎灯台が見守っているようです。これらは“斗南”、下北半島を開拓し発展させてきたものであり、それに魅了され訪れる人々をも含めすべてを包み込む美しいこの光景に“南船北馬”の言葉の一部分を垣間見ました。
- 入選
「大したもん蛇世界一だぞ」 植木 元
(新潟県関川村 えちごせきかわ大したもん蛇まつり)この大蛇は長さ82.8mで、竹とワラで作られた世界一の長い蛇とギネスブックに認定されています。82.8mというのは1967年(昭和42年)8月28日の羽越大水害を忘れないようにとこの数字になったそうです。500人に担がれた大蛇を観光客がスマホで撮影しているところを入れて、臨場感を狙いました。
- 入選
「どろんこ日和」 増田 哲子
(熊本県阿蘇郡 南阿蘇村)2016年4月の熊本地震で大きな被害を受けた南阿蘇村。昨年の5月、田植えの前にどろんこになって遊ぶ子どもたちを撮影しました。家族で助け合い、自然と共に暮らす人々。子どもたちの無邪気な笑顔が大人たちを元気づけ、復興に向かって進んでいる様子を見て勇気をもらいました。
- 入選
「遍路旅」 芝﨑 静雄
(愛媛県大洲市 金山出石寺)四国別格二十霊場第七番札所の金山出石寺(きんざんしゅっせきじ)は、アジサイの名所でもあります。雨上がりの霧を期待して出かけたところ、濡れたアジサイが美しく輝き霧の舞う遍路道を歩くお遍路さんと出会い、その姿は幻想的で素敵でした。お遍路さんの後ろ姿にはその人の「人生の旅」をいつも感じます。