飯塚市総合体育館「明日の空」
あしたのそら
陶板レリーフ

陶板レリーフ「明日の空」 原画・制作・監修:野見山暁治 協力:飯塚市小学生
飯塚市総合体育館 エントランスホール 2023年3月完成

制作風景

作家より

野見山暁治洋画家 川っぷちな、草茫々と茂っていて、流水はどこから来るのか、よくもと思うほど、どす黒く横たわっていた。
泳ぐたび母に叱られる。いくらトボけても、瞼や小鼻のふちに炭の粉がうっすらと残ってしまう。川っぷちの泥を、団子のように丸めて陽に晒していると、石炭のように燃える。
 ぼくたちは、ネンボウという、小さな棍棒を地面に突き立てたり、コマを回したり、天に向かって凧をあげるのに夢中だったり。
女の子は、何をやっていたのか、仲間うちで仲良く遊んでいたので知らない。
 小学校に入るようになって、はじめて洋服を着せられた。それまで着物だったので、両脚に分かれているズボンが似合わなかったら、どうしよう。僕は気取り屋だ。
 近くの街の世界展で、西洋の子供たちの絵を知った。川も魚もボートも、きちんと輪郭で示されていて、その枠をはみ出さないように、色が塗り分けされている。犬も猫も行儀がいい。西洋人みたいだ。
 ぼくたちの絵は、緑の葉っぱが地面と交わり、野原の花と一体になって、やけに大きい。
 僕は今、お爺さんになっている。故郷の飯塚に、体育館が建つ。自分が育った小学校の皆さんの絵を、いっぱい描いてもらい、その中から選んで、粘土で型取りして、体育館の壁いちめんに貼り付けた。
 故郷の後輩たち、いつの間に西洋の子供たちと同じ線、同じ色合い、区別がつかん。あの日本人の泥くささが消えている。
もう世界のどこに居ても、人間の生活は地球規模で進行しているのだろう。


<銘板に寄せられたメッセージ>
空はどこまでも拡がっている。僕の顔を空いっぱいに描こう。どこまでも広いんだ。大きな帽子を冠せよう、犬も連れてゆこう。
庭の木も忘れてはいけない。今に大きくなる日が来る。やがて風が吹いて、葉っぱが揺れ、空の向こうへ舞いあがる。
夢だから、いつかは消えるだろう。そうだ、雲の隙間にも描いておこう。これから未来に向けての、忘れてはいけない大切なメモなんだ。

この土地に生れて育った野見山暁治が、今ここで大きくなろうとしている子供たちの絵から選んで、粘土で、みんなの顔や車を作りました。

制作ノート

本作品は、飯塚市出身の野見山氏と次代を担う飯塚市の小学生とのコラボレーション作品です。
飯塚市内の小学一年生に“自分の夢、飯塚市の好きなところ、自分の好きなスポーツ”をテーマにした絵を募集。集まった1,098枚の中から約40枚の作品を選び、そこから野見山氏がインスピレーションを得て粘土で造形を制作しました。その造形をもとに、「クレアーレ熱海ゆがわら工房」の職人が約10か月かけて、拡大サイズの陶板レリーフを製作しました。
これまで平面のキャンバスで表現をしてきた野見山氏にとって、立体の陶板レリーフの制作・監修は初めての取り組みとなりました。

作品によせて

飯塚市長
片峯誠
 このたび、飯塚市総合体育館のエントランスホールに野見山暁治先生の自身初となる陶板レリーフを製作・設置いただきました。完成をお喜びするとともに、野見山先生をはじめ、製作・設置にご尽力いただきました関係者の皆様に心から感謝申し上げます。
 飯塚市総合体育館は、「だれもが、いつでも、生涯を通じて快適に楽しむことができる多種多様なスポーツの推進」という基本方針をもとに建設し、これからの本市のスポーツ振興及び健康増進を担う中核施設であり、スポーツによるまちづくりの活性化を進めるための施設であります。
 本作品は、市内の小学1年生に「自分の夢、飯塚市の好きなところ、自分の好きなスポーツ」をテーマに募集した絵から野見山先生がインスピレーションを得て制作されたと伺っております。本市の小学生とのコラボレーションによって制作された作品は、次代を担う子どもたちの豊かな心や感性を表現した素晴らしいものとなっており、飯塚市総合体育館のエントランスホールに安らぎある空間を創出していただいております。
 本作品が、飯塚市総合体育館のシンボルとして、また、真の美術品を身近に触れることができる作品として、訪れる多くの皆様に末永く愛されることを心よりお祈り申し上げます。

公益財団法人日本交通文化協会 理事長
滝久雄
 福岡県飯塚市の総合体育館に、地元ご出身の画家、野見山暁治先生の陶板レリーフ作品が完成しました。野見山先生に厚く御礼申し上げ、完成を心からお慶び致します。
 野見山先生が当協会の依頼で、ご自身にとってパブリックアート第一号となるステンドグラス作品を手がけられたのは2008年です(東京メトロ・明治神宮前駅の「いつかは会える」)。以来、ご自身の原画を基にステンドグラスを使った8作品を作って来られました。
 9作品目となる今回は初めての陶板レリーフで、それも飯塚市の小学一年生の絵から想を得たもので、いうならば先生と小学生のコラボレーション作品です。
 市内の小学一年生から「自分の夢、飯塚市の好きなところ、自分の好きなスポーツ」をテーマに絵を募集し、千点を超える応募作品の中から選んだ約40点の絵の題材(小鳥、顔、家、人、電車…)から、先生は粘土でひな型を作られました。これを「クレアーレ熱海ゆがわら工房」(熱海市)が陶板レリーフに仕上げました。
 故郷を同じくする、102歳の先生と6〜7歳の小学生が世代を超え、パブリックアートを通して交歓するという、素晴らしい機会をいただいた飯塚市の片峯誠市長と市役所の皆様、ご協力いただいた関係者の方々に深く御礼申し上げます。1972年以来、当協会は全国にパブリックアートを設置してきましたが、556番目にあたるこの作品が末永く愛されることを祈っております。

作品データ

原画・制作・監修野見山暁治 企画日本交通文化協会
協力飯塚市小学生 製作クレアーレ熱海ゆがわら工房
場所飯塚市総合体育館 エントランスホール マップ ニュース
設置時期2023年 3月
種類陶板レリーフ
サイズ縦2.8m × 横7.8m
キーワード自分の夢、飯塚市の好きなところ、自分の好きなスポーツ

作品データ

原画・制作・監修野見山暁治
協力飯塚市小学生
場所飯塚市総合体育館 エントランスホール マップ
設置時期2023年3月
種類陶板レリーフ
サイズ縦2.8m × 横7.8m
キーワード自分の夢、飯塚市の好きなところ、自分の好きなスポーツ
企画日本交通文化協会
製作クレアーレ熱海ゆがわら工房
ニュース

マップ

詳細マップ

この付近のパブリックアート

ステンドグラス
2017年 3月4日
飯塚市役所
「還ってくる日」
(1.6km)
MAP >

ダルドヴェール
1995年 4月
福岡市 東平尾公園
「(無題)」
(23.5km)
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