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作品紹介
昭和六十年春 ふる里・日本の華
ステンドグラス「昭和六十年春 ふる里・日本の華」 原画・監修:平山郁夫
JR東日本 上野駅 中央改札外コンコース (同駅3F新幹線コンコースより移設) 1985年3月完成 原画を見る
平山郁夫日本画家『「北のふる里」への思いをこめて』
今回のステンドグラスの一番のポイントは、構成もモチーフも日本的であるということです。もともとステンドグラスは西洋のものですから、たいていのステンドグラスは西洋的な構成と色づかいをしますね。ヨーロッパの建築様式と風土においては、ぶ厚い建物とさまざまな色の調和は、まさに状麗、荘厳の印象を与えますが、そのまま日本に採用してもちょっと違うように思うわけです。
そこで、わたしは西洋の技法であるステンドグラスを日本的な素材と構成を用いて、あえてやってみようと思ったわけです。親しみが持てるうえ、日本的な作品をつくるということはなかなかむずかしんですけれど、東洋と西洋を融合することにまず計画の主眼を置きました。
背景となっているこの青い色は”水”の色です。わが国の水の豊かさ、緑の豊かさを表現しています。全体の絵の真中に、桜やつつじなど花の色を集めて、上下はなるべく色の少ない乳白色の変化でもたせるようにしました。この水と緑の流れは、ある意味では抽象的です。そして、ステンドグラスを補強するための枠組みを、屛風ふうに、あるいは障子と受けとっていただいても結構ですが、それを構図の中に組み込んでいるわけです。
設置場所の関係で、太陽が東から当たると色とりどりに輝き、西から光が入ると上野の町が参加する。春夏秋冬、白くなったり、緑になったり、四季折々で変化を見せたいと考えました。それも余白といいますか、”間”をうまく生かすということが日本的な考えかたです。
そして、扇面のなかに特徴のある江戸文字で県名を書く。これもきわめて日本的な道具立てだと思っています。西洋にはこういう形の画面がありません。円形とか球形はあっても、扇形のような空間はないのです。
実は、このステンドグラスの原画を制作するに際して東北および上越新幹線の各県の象徴となるものを盛り込んでほしいという要望がありましたが、バラバラにいれてもまとまりがありませんので、扇形で中心をつくり、東から北のほうへ順に流れていく。それが新幹線のスピード感の表現でもあるんですが、そうしてそのなかに上野・浅草でいえばあさがおであるとか雷門とか、またその県の代表となる花を描いていこうと思ったわけです。
扇はもともと中国からきていますが、このようなかたちを完成させたのは日本です。古来六曲一双という言葉がありますが、このステンドグラスでも、六枚折り屛風が柱をはさんで対になっています。屛風一曲で独立した画面になります。それがひとつの県の象徴になる。そういう点では装飾性にすぐれた構図が取れるわけです。言わば各県の名札が扇一曲に表現されているということです。
モザイクでもステンドグラスでも、陶板でも同じことが言えますが、あくまで公共芸術ですから、何を描いているかよくわからないようでは困るわけです。故郷に帰るときとか、あるいは上京してくるときに、「ここにふるさとがある」という親しみですね。東北・上越にはそうした風土があるというのがわたしの見方でもあります。
制作に当たっては、芸大の日本画の助手の若い人たちが積極的に手伝ってくれました。みんなで一緒になってやりましたから、それも大きな特徴のひとつです。公園口に広場ができて、いろんな人たちがステンドグラスの前に集まり、ゴザでも広げてお弁当でも食べようかという気分になっていただければ、この仕事は大成功だと思います。(談)
東京芸術大学美術学部長、建築家・工学博士
清家清
『21世紀に向けての出発信号』
昭和のはじめ国鉄の山の手線が環状線として全通、地下鉄や京成電車の地下駅が新設されてその上に新しい上野駅が竣工しました。
私事に亘って恐縮ですが、その頃、私は上野の美術学校(現在の芸大)の学生でした。それから半世紀、その上野駅が東北・上越新幹線の始発駅として、21世紀に向けて出発進行ということになったのです。長年に亘ってお世話になった上野駅のこの慶事に上野の杜の片隅から心からのおよろこびを申し上げます。
この壁面を飾る大壁面は上野駅の21世紀にむけての出発信号です。
別稿の解説にもあるように平山郁夫教授の壁画をルイ・フランセン氏が協力してステインドグラスに焼付けてくれました。
平山さんは誰人もご存知のように当代日本画の巨匠です。また、フランセンさんはベルギー人の神父さんでしたが、昨年まで芸大で外国人教師として学生にステインドグラスの製作法を教えていました。
この伝統ある日本画と、これもまた伝統あるヨーロッパのステインドグラスの出会いは創立100周年に当たる東京芸大の第2世紀への出発を象徴するかのように思えます。
僭越とは思いましたが、そのステインドグラスの出来ばえが余りにもよいので、上野の住民代表のつもりで祝辞を呈しました。それは日頃/長年上野駅を利用させて頂いて来たみんなの気持だと思うからです。
日本国有鉄道 常務理事
須田寛
『新しい上野駅の象徴』
上野駅は明治16年に開業し、以来今日まで「北への玄関口」として、多くの方々にご利用いただいてまいりました。
この上野駅にいよいよ新幹線が入ってまいります。これを記念して大ステンドグラスがこの度完成のはこびとなり、上野駅の新しい顔となりますことは誠によろこびにたえません。
今回のステンドグラスは原画を平山郁夫先生にお願いいたしましたが東北・上越両新幹線沿線の代表的な風物、行事などが「昭和六十年春 ふる里・日本の華」と題して描かれており、旅情を誘うと共にこの作品を通じて、ふるさとの明るい話題も一段と盛り上がることと思います。新しい上野駅の象徴として、末ながく大切にさせていただきます。
本ステンドグラスの製作に際し原画・製作の平山郁夫先生はじめ、企画にあたられた(財)日本交通文化協会、製作の現代壁画研究所、ならびに、快くご協賛いただきました松下電器産業株式会社に対し心から御礼申し上げます。
松下電器産業株式会社 社長
山下俊彦
明治以来、北日本の玄関口として親しまれてきた上野駅が、いよいよ新幹線のターミナル駅として、あたらしい歴史を踏み出すことになりました。
この意義深い出来事を記念し、世界的な日本画家、平山郁夫先生の手になるステンドグラス「昭和六十年春 ふる里・日本の華」が除幕の運びとなりましたこと、心からお祝い申し上げます。
このステンドグラスは、沿線の風物を題材として、日本の美を表現した大パノラマで、新しい門出を迎える上野駅にふさわしい芸術作品だと思います。
これからの駅は、機能面ですぐれているだけでなく、行きかう人々の心に安らぎを与え、都市の景観に彩りをそえる文化性をもつことが大切になってきています。
これまで類のない日本的味わいを持ったこの大ステンドグラスが、上野駅のシンボルとして、皆さまの目を楽しませ、末永く親しまれることを願っております。
ステンドグラス
2017年 12月14日
東京メトロ 上野駅
「上野今昔物語」 (92m)
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タペストリー
1989年 10月
東京地下鉄(東京メトロ)本社ビル
「生命の樹」 (174m)
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