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ステンドグラス「歴程」 原画・監修:大山忠作
JR東日本 郡山駅 新幹線2階コンコース正面入口 1982年6月完成
大山忠作日本画家 私にとっては初めてのステンドグラスの原画制作でしたが、ルイ・フランセンさんのご教示を受けながら仕事を進めるうちに、ステンドグラスにおいて重要な「線」は、日本画にも共通のものであることがわかりました。その意味で、「線」について改めて考えることができ、良い機会を得たと思っています。
今回の作品のテーマについては、郡山の過去から現在、そして未来への動いている過程を抽象的イメージで表現したいと考え、「歴程」と名づけたわけです。というのも、郡山には単独でシンボライズできるような特別なものがないので、それならいっそのこと、何もないところから安積疎水が開発され、それが郡山の発展の基礎となり、豊かな未来へ向っていくイメージを作品にしたいと考えました。寒と暖、直と曲、明と暗などのコントラストを通じて、過去と未来を造型的にあらわしたつもりです。
このステンドグラスは、多くの絵画作品と異なり、不特定多数の人の目にふれるものです。大衆の心にとけこむ作品づくりに取り組むことができたことに、私は意義を感じています。
このステンドグラス作品は、1982年、東北新幹線「大宮–盛岡」間の開業を記念して新しい郡山駅に設置されたものです。駅はトランスポート機能の追及に終わらず、地域の文化を最大限に引き出す空間とすることが大切だとの思いから、ステンドグラスの原画は地元福島県出身で日本画壇の重鎮であった大山忠作画伯に依頼されました。
郡山市は太古より縄文・弥生の文化を根づかせ、万葉集や古今集には「安積」の地名が歌われています。明治になり猪苗代湖の水を安積平野に疎水する大事業により広大な沃野が出現。東北・常磐両線の開通により交通の要衝となってからは近代都市として飛躍的に発展しました。
抽象的なステンドグラスの構想の中には、郡山の過去・現在・未来の相貌が巧みに織り込まれています。あぶくま鍾乳洞の静かな趣が、やがて安積疎水の開発 による現代的な生気へと転換。そうした時の推移が右から左への水流にのせて打ち出される。そこに滔々たる動きが盛り込まれ、近代都市を表すビルのイメージが加わり、さらに中央部の明るい太陽につながり、郡山の未来の輝かしい姿が象徴されています。
大山氏は「郡山の過去から現在、未来への過程を 抽象的イメージで表現したいと考え『歴程』と名づけた。何もないところか ら安積疎水が開発され、それが郡山の発展の基礎 になり、豊かな未来に向 かっていくイメージを作品にしたかった」と語ります。
また新しく挑んだステンドグラスにおける線の重要性に触れ「ステンドグラスの線は 日本画にも共通するもの であることがわかりました。線についてあらためて考える、よき 機会を得ました」と語り、あわせて「不特 定多数の目に触れられ、大衆の心にとけ込む作品づくりに取り組めました」と喜ばれていました。
制作にあたったルイ・フランセン(クレアーレ工房前所長)は大山画伯の原画 をいっそうシャープな様式に整理し、コントラストの明確な、きびきびした表現にまとめあげました。「人間はいつも暗いところにじっととどまっていることはできず、光に向かって生きていく。その『歴程』に込められた大山先生の真の精神を できる限り再現するように努めました」 と語りました。
美術評論家
河北倫明
このたび東北新幹線がとまる新しい郡山駅に、大山忠作原画、ルイ・フランセン造形によるステンドグラスの大作が完成したという。錦上の花をそえるものとして大方の関心をひくことであろう。
作者の大山忠作さんは、すでに日本芸術院賞なども受賞している日展日本画部の重鎮で、さきに成田山光輪閣の襖絵「日月春秋」を成就したことは有名だ。この大作はその後パリでも展観されて、立派に文化交流の役目を果たした。
今回の原画をみると、さすが御当地福島二本松出身の作者だけに、抽象的な構想のなかに巧みに郡山の過去・現在・未来の相貌を織りこんでいる。過去のイメージとして、右側にあぶくま鍾乳洞の趣を表わし、その静かでさびしい感じがやがて安積疎水の開発による現代的な生気に転換していく。そうした時の推移が右から左への水流にのせて打出されるわけである。そこには滔々たる動きが盛りこまれるとともに、これに現代を表わすビルディングのイメージが加わり、さらに中央部の明るい希望にみちた太陽につながって、未来の輝かしい郡山が象徴されている。
もちろん、ステンドグラスとして制作されるためには、この手法に適した図形と組み立てが要求される。ルイ・フランセンさんの仕事はそこにあったようで、大山原画をいっそうシャープな様式に整理し、コントラストの明確な、きびきびとした表現にまとめあげている。全体として、右方の過去から左方の将来へ、暗いものから明るいものへ、寒いものから暖かいものへ、さらには静寂から活動へと展開しつつ大画面を構成したところに、このステンドグラスの妙味があろう。
抽象性を活かした今日の装飾壁面として、ユニイクな快作であることはまちがいない。
福島県文化センター 美術博物館館長
佐藤光
郡山は古くて新しい町である。南北にゆるやかに流れる阿武隈川の流域は、太古より縄文・弥生の文化を根づかせ、また万葉集や古今集に歌われた「安積」の地名は、今も生きていて、その歴史の深さを語っている。幾世紀にも亙ってこの土地を「時」はゆるやかに流れ去ったが、明治になって、猪苗代の豊富な水を安積平野に疎水する大事業による広大な沃野の出現と、東北・磐越両線の開通による交通の要衝となってから、県の中央部に位置する地の形と相俟って、近代都市として飛躍的に発展した。
また西に奥羽、東に阿武隈の山なみと四季折々の景観はすばらしく、安積疎水や阿武隈川の豊かな水は、灌がい、生活、工業などの用水を供給する。山と水に恵まれた町でもある。
戦後はさらに新産業都市の指定と共に工業都市として大きく変貌をとげようとしている。都市計画も格段に進み、文化、体育の施設の充実もめざましく、東北新幹線の開通はさらに、首都圏と東北圏を直結するかなめとしての役割を果たすことになるであろう。
このたび新郡山駅舎に、本県が誇る画壇の第一人者大山忠作先生の原画による大ステンドグラスが飾られることになりましたことは、この種の壁画類のほとんどみられなかった本県にとっても、大きな文化的出来事というべきであろう。先生は過去と現在と未来にわたる郡山のイメージを、太古の奇勝「あぶくま洞」と、近代を築いた疎水、さらに現代のビル群、さらに未来を示す太陽をモチーフとして、重厚、壮大な造形と華麗な色彩によって象徴化されたものであろう。見事な出来栄えという外はない。これを企画された関係者にも深く敬意を表したい。
郡山駅駅長
渋谷昇三
みちのくの明日をひらく東北新幹線が開業し、わが郡山駅も新しい歴史の1ページを記すことになりました。国鉄の一職員としてこれ程うれしいことはありません。そのうえ、この度は東北新幹線開業を記念したモニュメンタルなステンドグラスが完成し、一足お先にお披露目することになり、郡山駅駅長として大変喜ばしく存じます。このステンドグラスは、福島県ご出身の大山忠作画伯原画によるもので、郡山発展の基礎を築いた安積疎水、あぶくま鍾乳洞のみごとな景観、そして未来都市郡山を象徴する太陽などが題材として描かれています。郡山地域の風土、文化を生かしたこの作品は、ややもすれば画一的になりがちな新幹線の駅舎に、個性と雰囲気を添えることに成功しています。朝に夕にステンドグラスからあふれる光がコンコースに映える姿を想像し、駅員ともども大切にするよう心がけたい考えです。原画制作の大山忠作画伯、協力のルイ・フランセン先生、企画・制作の(財)日本交通文化協会、ならびに協賛いただきました(株)うすい百貨店に心から感謝いたします。
陶板レリーフ
2014年 2月16日
福島空港
「ユートピア」 (19.5km)
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ステンドグラス
1995年 9月
JRA 福島競馬場
「(無題)」 (41.5km)
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