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作品紹介
風月延年
陶板レリーフ・瓦 「風月延年」 原画・制作:ルイス・ニシザワ
京成電鉄 京成上野駅 正面口コンコース 1981年9月26日完成
ルイス・ニシザワ壁画家――設置場所としての京成上野駅をどのようにお考えですか?
ルイス・ニシザワ 上野駅の周辺には、美術館や博物館、文化会館などの施設、さらに動物園や公園があり子供や若い人が多いですね。そういう人たちが利用する駅という意味ではたいへん興味があります。
――本作品の題材として、子供の生命力といったものがとりあげられていますが、どんな意図をお持ちですか?
ルイス・ニシザワ 子供の世界を描きたいという考えは、ひとつのテーマとして最初からありました。メキシコでは、壁画は伝統的に民衆を育てる一手段と見なされています。中世ヨーロッパにおいて、ステンドグラスや壁画が文盲に対して見ながら教える役割を果たしていました。エジプトでも同じです。壁画は本来社会的役割をもっていて、中国、ペルシャ、イラン、エジプト、マヤ・アステカ時代の人びとは、そのような意味から建物の中に壁画を必ず採用したのです。建物の意味や人生観を教えるためもあったわけで、そうでなければ、単に装飾的な絵でしかないことになります。
――「風月延年」は、どのように解釈すればいいのでしょうか?
ルイス・ニシザワ ことばそのものは世阿弥からとっています。鯉のぼりは、子供の日の象徴ですが、同時に困難に対していさぎよく力づよく戦うことを意味していますね。その鯉から子供が出てきて、風車を動かすのです。このようなことを何年も何年も繰りかえすわけです。風車は、もうひとつアトミカ(原子力)を象徴し、将来のエネルギーを暗示しています。
――鯉の口から子供が出ていることに驚く人も多いでしょうね。
ルイス・ニシザワ ショックを受けることは見る人が足を止めることで、ある意味では意図的なことです。なぜ?という疑問が起き、創造力が働きます。創造力は人間を新たにしますから……。
本作品の制作のために来日したルイス・ニシザワ氏は日本各地を意欲的に巡り、伝統文化や地方の風習に強い関心を示し、とりわけ鮮やかな色彩の鯉のぼりと風車は彼の創造力を強く刺激しました。背景の素材には日本の伝統的な瓦を用い、鯉のぼりの本体には登窯で焼成された陶板レリーフを使用しています。
東京芸術大学美術学部長、建築家・工学博士
清家清
漢文のヨハネによる福音書(新約聖書)の冒頭は『太初有道、道與上帝同在、……』とあります。日本語にすれば『初めに道があった、道は神と共にあった、……』ということです。鉄道とか、高速道路のような道は近代になって造られた道ですが、私どもアジア人が考えている道というものは、神と共にあったということです。すべてにさきがけて道があったといえましょう。むつかしい神学上のことはさておき、道は太初から神=即ち真善美と共にあったと考えます。
ところで現在、私たちの周囲を見まわして、大蛇がノタウチ回るように醜い高速道路、或いは雑踏に明け暮れる駅舎から美が失われていることに気づく人も多いことでしょう。道が美を失ったのです。
むかし、私は美術学校の学生として5ヵ年上野に通いました。いま私が美術学部長をさせて頂いている芸術大学です。その頃の上野は高速道路も無く、京成電車の博物館・動物園駅を始め、新築の上野駅などいかにも文化の香り高い駅舎が上野公園の界隈にありました。国鉄の上野駅にしても、いまも残っている古いコンコースの天井など、震災後の復興の気に燃えた美しいデザインを見ることができます。美が鉄道と共にあったのです。それが戦災で上野から浅草にかけての下町が殆んど潰滅してしまったせいもあるのでしょうが、上野駅周辺の文化的な雰囲気は稀薄になってしまいました。
最近になって、上野駅が東北・上越新幹線の始発駅に決まったり、京成電車は成田空港への特急電車=いいかえれば国鉄新幹線の始発駅になるなど、再び新しい上野周辺の文化的な胎動が始まっています。
この秋に当り、文字通り国際的な壁画家として知られるルイス・ニシザワ画伯の力強いレリーフで京成上野駅を飾ることは、さらに上野公園の文化性を高め、かつてそうであったように鉄道が美の先駆けとなるという意義を持つことになるのではないでしょうか。
ニシザワ画伯はここで江戸以来の伝統の鯉のぼりをテーマとして、少年と鯉が龍に化身する様子を表現しています。これからの上野駅周辺のありかたを象徴するかのように力強い変身の図柄です。
鉄道は美と共にあるという(財)日本交通文化協会のお仕事が、これ等の優れた芸術家の作品で、ますます発展されるよう祈ります。
駐日メキシコ大使館 代理大使
リカルド・ベラスケス・ウエルタ
今回、日本に於て、著名な画家 ルイス・ニシザワ氏制作の新しい壁画が完成されたことを心より、お慶び申しあげます。ルイス・ニシザワ氏は、その独自の画風と無限のエネルギーで数々の壁画を制作し、メキシコにおいて高く評価されている芸術家であります。
この壁画「風月延年」の完成をお祝いすると共にこの作品がすでに存在する日墨の友好の絆をさらに強めるために寄与せんことを心から期待する次第であります。
京成電鉄株式会社 代表取締役社長
佐藤光夫
このたび、京成上野駅コンコースを飾る陶板レリーフ「風月延年」が完成いたしました。ご承知のように、京成上野駅は日本の空の表玄関、成田空港と直結する駅として、その国際性・将来性がますます高まっていますが、この公共的スペースに内外の旅客の眼を楽しませる壁画を設置できましたことは、私どもといたしましても至上の喜びでございます。そればかりでなく、本壁画制作に際しまして、国際的壁画作家として知られるメキシコのルイス・ニシザワ先生にお願いすることができました。これもルイ・フランセン先生、利根山光人画伯、ならびに(財)日本交通文化協会の熱意あふれる懇親の賜と、心から御礼申しあげます。すでに成田空港駅は森田曠平画伯による陶板レリーフ「曲水の宴」が完成しており、今回の作品により上野と成田が壁画によって結ばれたことになります。本壁画は、日本の大衆文化を象徴する鯉のぼりに子どもの生命力を謳い上げた図柄で、躍動感あふれる作品となっています。みごとな芸術の実現にご尽力いただきました皆さまにあらためて御礼申しあげます。
ステンドグラス
2017年 12月14日
東京メトロ銀座線 上野駅
「上野今昔物語」 (293m)
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ステンドグラス
1985年 3月
JR東日本 上野駅
「昭和六十年春 ふる里・日本の華」 (337m)
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