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作品紹介
杜の讃歌
ステンドグラス「杜の讃歌」 原画・監修:近岡善次郎
JR仙台駅 改札外中央コンコース 1978年6月8日完成 原画を見る
近岡善次郎洋画家 ステンドグラスは、私にとって初めての仕事でたいへん興味がありました。当初は下絵だけかと思ったのですが、原図までやることになり正直いって閉口したときもありました。しかし、そこまで画家がやらないと良いものができないこともよく理解できました。仕事が進むにつれ、素材が透明ガラスということから来る絵画との相違点などもはっきりしてきて、難しさもありましたが、それだけに得るところも多かったように思います。なによりも、楽しかったのは、造形のルイ・フランセンさん、ステンドグラス製作の大竹さんと一緒に共同で仕事ができたことです。画家というのは、ふだん一人きりの孤独な作業をしておりますが、そういう意味で、未知の世界の面白さ、不思議さに接する機会がもてたことを幸せに思っています。
この作品が改装まもない仙台駅に飾られるそうで、東北人の一人である私としてもなによりの光栄です。題材としては仙台の名所・名物を扱っておりますが、私自身仙台に取材に行き、見聞きし感じたことを画面に表わしたつもりです。共同制作のため、非常に長い時間がかかりましたが、制作過程の楽しさを思えば大した苦労ではありませんでした。
このステンドグラスは新幹線開通を控え、装いを一新した東北の表玄関、仙台駅の発展を願って制作されました。題材は杜の都にふさわしく七夕飾りと伊達政宗の騎馬像、日本三景の一つ松島の風景をとりいれ、地域色豊かで大胆な構図となっています。制作にあたってはヨーロッパ直輸入のアンティークグラスを使用し、自然光を利用した本格的なものとしては日本で最大規模の作品です。題名は一般募集により決定されました。(作品銘板より 1978年6月8日設置現在)
1998年に修復が行われ、現在では内照式になり駅中央改札を出たところの吹き抜けコンコースで旅行者を迎え、待ち合わせ場所に、イベントの舞台背景にと親しまれています。
美術評論家
河北倫明
このたび東北新幹線の仙台駅に近岡善次郎さんの作品による、ステンドグラスが飾られることになり、いよいよ竣工の運びという。私はその原図を見せていただいたにすぎないが、きっと同駅の良き名物となって旅行者たちの眼に美しい印象を刻むだろうと期待している。
その構図は、仙台名物のあの華麗な七夕飾りを中心にして、伊達政宗の騎馬像や、松島の風景などをのぞかせたもので、動きに富んだ華やかな組み立ての中に仙台の風土感を綜合したものである。赤、朱、黄、紫、緑、青、白といった多彩な色どりが、きっとステンドグラスの効果で倍加されるにちがいない気がする。
近岡善次郎さん(1914年~)は、山形県新庄の旧家の生れで、東京の文化学院の美術部で石井柏亭や有島生馬に師事しながら絵の道に入った人である。石井、有島の両先達は、いずれも二科会の創立会員であったし、また昭和11年に発足した一水会の創始者でもあったから、近岡さんも、二科会から一水会へと出品をつづけ、着実に仕事を伸した。昭和31年から翌年にかけて滞欧遊学したが、ひろく画壇にその力量を印象づけたのは、昭和37年第6回の安井賞を受賞した頃からである。そのときの作品は「巫女」という民間伝承風な異色の風俗をあつかったものであったが、この人らしい真摯と素朴の中に、こまやかな愛情と、するどい観察眼を滲ませているのが注目をひいた。
その後、近岡さんは、全国各地に残っている明治期の西洋館をたんねんに写したスケッチ集、「西洋館の旅」という香り高い画集を刊行し、またその情感あふれる展覧会によって多くの愛好家の眼と心をとらえたが、そうした素純の誠実、優雅な心情にめぐまれた近岡さんのような作家が、このたびの記念的なステンドグラスの装飾のような仕事に当ったことの意義は深い。めざましく開発された現代新技術の結晶といってよい新幹線、その東北の玄関口である仙台駅に、花を添えるように心ゆたかな芸術的風趣をもたらすものとして、近岡さんの作品はいかにもふさわしいと私は思う。
陶板レリーフ
1992年 3月
仙台市 青葉通地下道
「春」 (625m)
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陶板レリーフ
1992年 3月
仙台市 青葉通地下道
「夏」 (631m)
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