国際瀧冨士美術賞第38期受賞者で画家として活躍
10月にJR上野駅でパブリックアート普及活動特別展として展示されます
今年の「交通総合文化展2021」(10月27日~11月1日)の招待作家には、国際瀧冨士美術賞の第38期(2017年)受賞者で画家の許寧(シュ・ニン)さんをお迎えします。
今回、許寧さんは陶板による作品「天下」を出品します。主に絵画の発表を行ってきた作家にとって陶を素材に使うのは初めての試みです。許寧さんは協会の招待を快諾し、2021年3月から「クレアーレ熱海ゆがわら工房」(静岡県熱海市泉)で、工房のスタッフから粘土の造形の仕方や焼成による釉薬の色の出し方などについての詳しいレクチャーを受けました。今春4月からは工房に滞在をしながら、本格的な作品造りに取り組んだ許寧さんは、7月までの滞在の中で大小さまざまな陶のピースを作り上げています。
景色や草木、花のように見えるもの、具体的に何かのすがたをあらわしているものもあれば、釉薬による色彩のグラデーションや、複雑な形状が入り混じり、見る人によって様々なイメージを抱かせるような抽象的な形状のピースや、中には1cmに満たないほどの細やかな粒状の断片もあります。許さんはこれらを組み合わせて幾つかの迫力ある作品とし、特設スペース壁面に展示します。


許寧さんは中国・北京に生まれ、子供の時から水墨画を学び、北京の首都師範大学油画専攻専科卒業後の2006年に来日しました。多摩美術大学ではネーデルラント絵画や宗教画や美術史などを幅広く学び、中国の古典思想や現代ファッションからも影響を受け、4年生だった2017年に第38期国際瀧冨士美術賞の優秀賞を受賞しました。その後、同大学院に進学し、修了制作の「Oil painting in history – Freedom」で多摩美術大学 辰野登恵子賞を受賞。またこの作品は日本国内の芸大・美大からノミネートされた優秀な卒業・修了制作の集う、トーキョーアートアワード丸の内2020にてグランプリを受賞します。
現在は、東京の小山登美夫ギャラリーに所属し、今春開催された個展「Season-Letter」をはじめ、川崎市岡本太郎美術館「第24回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」入選も果たすなど、積極的に発表を続けています。 学部卒業制作までは油絵具を画面一杯にのせた、迫力に満ちた作品でしたが、現在はキャンバスの余白を大胆に残し、油絵具の跳ねや垂れや塊などのテクニックも駆使した色彩豊かな表現へと変化しています。交通総合文化展2021で、許寧さんが陶板という造形を通してどのような作品宇宙を見せてくれるかご期待ください。


「交通総合文化展2021」は10月27日から11月1日までJR上野駅中央改札口外グランドコンコース特設会場で開催されます。
許寧さんは招待作家としては5人目となります。国際瀧冨士美術賞の受賞者を交通総合文化展に招待するようになったのは2017年からで、この年は瀧冨士美術賞(現在の国際瀧冨士美術賞)の第1期(1980年)受賞者の彫刻家・青木野枝さんでした。翌2018年は第20期受賞者の画家・内海聖史さん、2019年は第36期受賞者の画家・金丸実華子さん、昨年は第29期受賞者の画家・大小島真木さんでした。過去4人の招待者にはステンドグラス、陶板レリーフで素晴らしい作品を作っていただいております。