国際瀧冨士美術賞の第29期(2008年)受賞者で
アーティストとして活躍
10月にJR上野駅でパブリックアート普及活動特別展として展示されます。
今年の「交通総合文化展2020」(10月21日~26日)の招待作家には、国際瀧冨士美術賞の第29期(2008年)受賞者でアーティストの大小島真木さんをお迎えします。
今回、大小島さんは粘土で造形したさまざまなモチーフの陶の作品を出品しますが、絵画から出発して幅広い表現活動をしてきた彼女にとっても陶器を素材に使うのは初めてです。
大小島さんは協会の招待を快諾すると、2019年12月から「クレアーレ熱海ゆがわら工房」(静岡県熱海市泉)で、粘土の造形の仕方や釉薬の色の出し方などについて工房のスタッフから詳しいレクチャーを受けました。最初は試作品を造り、今春からは工房に滞在をしながら、本格的な作品造りに取り組みました。こうして動物のオブジェや人間の頭部や骨、臓器など数多くの作品が生み出されました。
これらの作品は苔や植物をあしらった展示台に陳列されます。地球環境に深い関心を抱く大小島さんは、種を超えたさまざまな生命体、有機物、無機物は土を介して集い、語り合い、絡まり合うと捉えます。またあらゆる存在は土に帰り、同時にその土は植物などの生命を新たに育んでいく。そうした循環の中心に土があると見ます。展示のタイトルを「土のアゴラ/Agorá of Multi species」としたのもそのためで、アゴラとはラテン語で「広場」という意味です。


大小島さんは2011年に女子美術大学大学院を修了後、世界各地でのレジデンスを重ねながらアーティストとして精力的に作品の発表を続けています。
フランスの海洋調査船タラ号に乗船してのレジデンスや、瀬戸内国際芸術祭、青森県立美術館、練馬区美術館を始め、旅するように各地で滞在制作を行ってきました。
ドローイングや壁画、立体・映像などのインスタレーションなど幅広い表現を通して展開されるのは、森羅万象の有機物や無機物、命あるものとないものが複雑に重なり、響きあい、織り上げるように広がっていく地球と宇宙への賛歌です。
過去3年ほどは鯨をメインモチーフとして、海と循環する生命のつながりを描いてきました。「鯨シリーズ」が一段落したいま、「土」をテーマにすることで大小島さんの関心は海と陸の繋がりへ向かっているようです。
「交通総合文化展2020」は10月21日から26日までJR上野駅中央改札口外グランドコンコース特設会場で開催されます。
過去、2017年には第1期受賞者で国際瀧冨士美術賞審査員を務める彫刻家・青木野枝さんによる「空の青/水」、2018年には第20期受賞者で近年多くの公共空間への作品展示の実績を重ねる画家・内海聖史さんによる「頭上の色彩」と、それぞれクレアーレ熱海ゆがわら工房のステンドグラスの素材を用いながら作品発表を行いました。
昨年2019年には第36期受賞者の金丸実華子さんが、同展覧会では初となる陶と和紙による作品「季(とき)のうねり」を発表し、今回の交通総合文化展2020では、昨年に続き陶を用いた大小島さんによる新作が展示されます。