文化芸術を社会の基盤に捉え、文化芸術団体の活動に期待
公共施設へのパブリックアート設置活動と食文化が文化芸術の領域に加わります
文化芸術振興基本法の一部を改正する法律が6月16日、参議院本会議において全会一致で採択され、成立しました。パブリックアートの普及・振興や、若手アーティストの育英事業を展開する当協会としても、この法律は文化国家・日本を築いていく上で大きなステップとなると評価しています。
最初に文化芸術振興基本法が成立したのは2001年で、16年ぶりの今回の改正によって名称も文化芸術基本法となります。名称を変更するほど大幅な内容の変更があったということでもあります。
この文化芸術基本法の特徴は第一に、文化芸術を社会の基盤に据えることを明確にしたことです。旧法は、いわば文化芸術の大切さにおける理念の表明というべきものでした。これに対して新法は、文化芸術の固有の価値を大切にしつつも、そこにとどまるのではなく、文化芸術を観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、地域振興、産業などの施策と有機的に結びつけていくことで、文化を軸にした国造りを追求していくことを明らかにしています。文化芸術はそれ自体の上にあぐらをかいていてはダメで、広く社会の中で活かしていくべきということでもあります。
第二の特徴は、文化芸術を担う団体への期待です。旧法では国の役割に主眼を置いていましたが、新法は国の役割はもちろんですが、文化芸術団体の「自主的かつ主体的」な文化芸術活動の必要性について言及しています。文化とは国が上から号令をかけて創るものではなく、個々の文化芸術団体の創造性溢れた主体的な取り組みの中から生み出されるものとの認識がここにはあります。また国、地方公共団体、民間事業者と文化芸術団体が連携・協働することの大切さも指摘しており、文化芸術団体を含むさまざまな主体(アクター)の有機的な関係性の中で、よりダイナミックに文化芸術の施策を推進していこうとの考えがあります。


左:伊勢志摩サミット(2016年5月)の初日のワーキングランチで首脳らに供された和食(外務省提供)
右:当協会が池袋本町地区校舎併設型小中連携校に設置したステンドグラス「繋がる」(2016年)
第三の特徴は、文化芸術の領域を拡大したことです。旧法では生活文化として茶道、華道、書道を挙げていましたが、新法ではこれに食文化を加えました(第12条)。和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録され、また世界で和食ブームが起きています。食文化が加わったのはある意味当然と言えるでしょう。そしてもう1つ、公共の建物等においてパブリックアートの設置を推進するとの項目も加わりました(第28条2項)。パブリックアートの普及・振興を活動の柱の1つに据える当協会にとって大きな励みになります。
以上、文化芸術基本法の特徴を幾つか挙げましたが、これからも折に触れて同法をめぐる社会の動きをニュースやインタビューなどでお知らせしていきます。